英語多読
英語多読とは?
コロナ感染拡大前は、豊田高専図書館では学外の方をよく見かけていました。英語多読用図書を利用されているのです。電気・電子システム工学科(E科)が実践してきた多読授業(毎週、授業時間内にコアとなる読書時間を確保する)の成果が認められ*、2008年度からは、豊田高専の全学科1,2年でも、多聴多読授業が始まっています。
英語多読の効果
英語多読は、2002年に吉岡先生が豊田高専に導入された新しい英語学習法です。先行して授業実践をしてきた電気・電子システム工学科(E科)では、本科2年から専攻科2年までの6学年継続して毎週45分×通年の多読授業があり(2004年度の2年生から)、2012年度以降の専攻科2年生は継続7年目になります。2016~2020年度E系専攻科2年生(多読授業7年目)のTOEIC得点の平均(外国人留学生と英語圏への留学経験者を除く15名の年度自己ベスト)は600点で、 2019年度大学4年文学・語学系(英語専攻)全国平均583点を超えています。 2021年1月までに296人のE科・E系学生が100万語を読破しました。約300万語以上読んだ学生は、TOEIC得点が英語圏への留学経験者 (2005~2010年度3年生88人の平均は、多読なしで606点)も超えています。 現在豊田高専には、多読用のやさしい英文図書約4万冊が揃い、国内トップクラス の充実度です。この恵まれた環境を在学中に活用しましょう。
効果を上げるためには?
多読で英語運用能力が向上するのは、多読三原則(辞書をひかない/分からないところはとばす/つまらなくなったらやめる;元電気通信大学酒井先生)に従い、やさしい英文(挿絵付き)をたくさん読むことで、(日本語に翻訳せずに)英語を直接理解する能力が身につくからです。Readingだけでなく、Listeningにも効きます。たくさん読んでいる学生は読書速度も速く(読み返していません)、「日本語が思い浮かばない」と言います。
ただ、このような効果を得るには、たくさん読むことが不可欠です。平均的な高専生 の場合、10万語読んだあと初期に読んだ本を再読すると、すらすら読めることに気付きます。30万語でやさしい本なら読めると実感でき、60~150万語でTOEIC得点が上昇し始め、300万語で英文多読が趣味になる、という変化があるようです。毎日15分読めば、(7ヶ月で30万語読めますから)1年で効果を実感できますが、年間10万語未満の読書ペースでは、卒業までに効果を実感することは難しいでしょう。
また、最初の40万語までは、絵本を中心に、やさしい英文図書を選ぶことも大切です。読書語数を稼ごうとすると、ついつい、レベル(YL: Yomiyasusa Level)の高い本に手がでてしまいますが、高YLの本を読むときは、日本語に翻訳する癖がなかなか抜けません。思い切ってYL0.8以下の本を読み、英文から直接イメージを掴む練習をするのが、上達の近道なのです。このレベルの本は館内閲覧専用で貸出はできませんが、その代り、いつでも図書館で読むことができます。さらに、(50~100万語読んで)YL1.5~2.2の本を読めるようになると、面白い本とも出会えます。英語学習のためでなく、内容に惹かれて読むようになると楽しいですよ。
読書は個人的な活動ですが、仲間と一緒だと続けやすくなります。学校教育では、採用例の少ない英語多読ですが、社会人の間では一つの潮流となって広がりつつあり、職場、地域やネット上での交流があります。東海4県には、本校図書館以外にも、小牧、一宮、蒲郡、豊田、豊橋、田原、知多、常滑、豊明、安城、刈谷、豊川、大府、名古屋(鶴舞、千種、東)、各務原、多治見、岐阜、関、本巣、浜松、湖西、袋井、磐田、静岡、津、松坂の市立図書館、愛知県立、三重県立、静岡県立図書館にも多読用図書が収蔵され、利用できます。家族や友達を誘って、本格的に英語多読を始めてみては、いかがでしょう?
* 本校の取組「多読・多聴による英語教育改善の全学展開」は、2008年度「質の高い大学教育推進プログラム」(教育GP)の選定プロジェクトです。
参考図書・文献
- 快読100万語!ペーパーバックへの道、酒井邦秀(電気通信大学)、ちくま学芸文庫
- 「100万語多読入門」古川・伊藤、コスモピア
- 今日から読みます100万語:多読用図書の紹介
- 「めざせ!1000万語英語多読完全ガイドブック」、古川他、コスモピア
- 図書館多読のすすめかた」西澤・米澤・粟野、日本図書館協会
- 「理系クラスでの多読授業」 著者:吉岡・西澤、英語教育2004年2月号掲載
- 「苦手意識を自信に変える、英語多読授業の効果」:西澤・吉岡・伊藤、2006年8月 高専教育教員研究集会
- 「英語多読を通じた図書館の授業支援と地域貢献」:西澤・吉岡・伊藤、2007年 8月高専教育教員研究集会
- 英語多読における多読語数と英語運用能力向上効果との関係」:伊藤・長岡、2008年 8月高専教育教員研究集会
- 「学校を越えて英語多読学習を支援するWeb読書記録手帳と自動図書推薦システムの開発」:吉岡・深田、2008年 8月高専教育教員研究集会
- 豊田高専における英語多読授業の成果と課題」:西澤・吉岡・伊藤・深田・長 岡、2008年8月日本多読学会ワークショップ
- H21年8月21-23日:教育GP多読中間報告会 &多読学会@豊田高専
- H20教育GPプログラム「多読・多聴による英語教育の全学展開」( もくじ、背景、 成果と課題、 外部評価会、 参考資料)
- 科研費「多読・多聴による自律的英語学習指導法の研究」成果報告書 (1) (2)
- 「工学系学生の苦手意識を克服し自律学習へ導く英語多読授業」工学教育 58-3 pp.12-17 (PDF )
- 「豊田高専英語教育の特長、英語体験としての交換留学と多読授業」日本高専学会誌 15-2 pp.9-14 ( PDF )
- 「英語多読が効果を上げるしくみと多読授業の成否要因に関する一考察」工学教育 59-4 pp.66-71 ( PDF )
- 「国際交流活動と英語多読による工学系学生の英語運用能力改善」工学教育 61-1 pp.147-152 ( PDF )
- 「Cooperation of Two Extensive Reading Programs in Japan and Vietnam」Proceedings of 2016 JSEE Annual conference pp.16-21 ( PDF )
- 「Effect of a six-year long extensive reading program for reluctant learners of English」Modern Journal of Language Teaching Methods 7(8) pp.269-276 ( PDF )
- Book-Talk: An Activity to Motivate Learners to Read Autonomously in a Foreign Language」Journal of Language and Cultural Education 6(1) pp.145-157 (PDF)
- 「Benefits of Long Term Extensive Reading Program in English as a Foreign Language」Language, Individual & Society 12 pp.9-23 (PDF)